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玉藻

玉藻

院政の研究

院政の研究

美川 圭氏著(臨川書店)
(平成8年11月20日・第一刷発行平成13年3月10日・第二刷発行)



【内容】
問題の所在-院政の研究史-
平安時代の政務とその変遷
公卿議定制から見る院政の成立
公卿議定制の類型とその性格-坂本賞三・安原功両氏の批判にこたえて-
寺社問題から見る院政の成立
摂関政治と院政-公卿議定制に関する坂本賞三氏への反論を通して-
院政における政治構造
関東申次と院伝奏の成立と展開
院政をめぐる公卿議定制の展開-在宅諮問・議奏公卿・院評定制-
総括としての院政論



院政という概念を、ある特定の時代(治政)を取り出すのではなく、総括としてとらえることを目的とされた書です。
院政の研究史と、いままでの視点や観念を取り払った形で新たに『院政の成立』に関して、多くの諸問題を投げかけてくださっていると感じました。

本書では、公卿議定のありかたや、院と摂関の折衝・摂関を含めた大臣級の諮問機関のありかたについて「御前定」を取り上げておられます。反論・再反論といった項目もあるので、批判をなさっている方々の論文も、機会があれば是非拝見したいです。
院政期の本所裁判、記録所の性格、鎌倉幕府との関わりについては、大変興味深く、特に文治の記録所の成立に関しては、勉強になったと思いました。
同じように、頼朝の提案した議奏公卿たちの事に関しても、確かに文書で「この人達を」との指名は行われていましたが、複雑な京の公家社会を読み切れなくて、兼実の孤立に繋がって実現しなかったというところなど、まさに『玉葉』の記述にほの見える焦燥感はこれであったのかと、再確認しました。
ただし、私の興味ある「後白河~後鳥羽院政期」に関しては、記述が少なくて、このような時代についても、ご意見がいただきたいです。

摂関政治から院政へと転換する過渡期と、鎌倉時代後期の院政が一定の制度化されて確立した時代については、多くの研究がなされているのに、その間の政治制度については、あまり研究が進んでいなかったことを知りましたが、こういった書籍の出版がきっかけとなって、後に続く若い研究家の方々の研究成果の発表の場が増えることを願ってやみません。





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